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伊集院光「立川談志・落語における言葉のイリュージョン論」

2011.11.23 (Wed)
1998年12月14日放送の「伊集院光 深夜の馬鹿力」にて、立川談志がゲスト出演していた。そこで、伊集院光が立川談志の「言葉のイリュージョン」について語っていた。

伊集院光「『言葉のイリュージョン』って言葉を、少なくとも30数年前から本の中で言ってるんだけどね。『言葉のイリュージョン』って、スゴイとんでもないことを言うじゃないですか。とんでもないことなんだけど、ちょっと画が浮かぶこと」

「それで、落語と脳汁がビュービュー出てるような喋りは、全く別物だと思ってたんだけどね。…落語っていうのは、画的にある程度想像がつくんですよ。画が、一瞬頭に浮かぶイリュージョン」

「たとえば、『お灸据えたらびっくりして屋根突き破って見えなくなっちゃうぞ』っていえば、映画のセットで言えば、古典落語の舞台、時代劇でお灸据えてるやつが、あんまりにも熱くて、ブワーって飛んで、長屋の屋根を突き破って、そのまま雲の彼方にスゥーって消えていく画が、一瞬頭に浮かぶイリュージョンなのね」

「俺が、バカ歌とかでいう『全裸の股ぐらケチャップ塗って、逆さ宙吊り、それでもハインツなら垂れません』っていうのも、一瞬一瞬、画が浮かぶんですよね…飛びすぎのギャグ、メチャクチャ飛んでて面白いっていうのは、俺は相当テンション上がってないとできないんだけどね」

「談志師匠は、その方法について、『もともと、子供なんてのはそんなもんで、その後、ルールをいっぱい覚えていく。(それで理路整然と話をすることが、できるようになるのだが)でも、これはホントは不自然なこと。今、頭にチラっとよぎったことを全部喋っていくのが、一番良いんだけど、何かしらの抵抗があるんで、飛びきれなくて面白くなかったりする』」

「『それを学んでいくのと同時に、日頃、面白いことをチョイスしておいて、最初に作っておくと、他の画が浮かばないときにそれを割り込ませたりしていくと、相当、長時間すっ飛んでいられるし、どういう脳の構造しているんだって話ができる』と」

「対談が終わった後に話をしたのは、その時に出す面白い言葉のチョイスとかは、『センスであって、絶対に鍛えられない』ってずっと仰ってたんだけどね。こういう、カッ飛んだことと、落語は全く違うところにあると思ってたんだけど、落語っていうのは、『それをもうちょっと分かりやすくしようか』とか、『もう少し現実味を入れた方が良い』とか、そういうことだと」

「そういうことが、今日初めて分かって。俺はもう落語とは全く別の仕事をしているんだなぁって思ってたのが、『そうやって考えると、くっついてるのか』って思ったんだよね」

「ただねぇ…『談志・円鏡 歌謡合戦』っていうのを、是非CD化して欲しいんだよね。ニッポン放送が権利もってると思うんだけど、少なくともこの番組を聴いているリスナーは、へたすれば『伊集院なんか屁だね』って、『アイツの飛び方なんか、この程度か』ってくらいスゴイんだよね」

以下、実際に立川談志が語った『言葉のイリュージョン論』である。

立川談志「『談志・円鏡 歌謡合戦』ってのは、落語と別のもんだと思ってたんですよね」

伊集院「僕も、聞いている限りは、別だと思ってたんですけど」

立川談志「別じゃなかったんですよ。アレがホントなんです」

伊集院「もう、飛んでるというか、飛躍もしてるし、シュールっていっちゃシュールだし」

立川談志「うん、うん」

伊集院「今風に言えば、リズムもすごいし。何というのか…超天才同士の脳の絡み合い、みたいな番組じゃないですか」

立川談志「そうだと思いますよ」

伊集院「あれは、落語の芸とどこか繋がるところはあるんでしょうか?」

立川談志「内容と繋がる」

伊集院「それこそ、オープニングの小咄が、『隣の空き地に原子力潜水艦が上がって来たってね…正座して待ってよう』」

立川談志「うん、そうそう」

伊集院「(笑)…落語とは、スゴイ離れてはいないんですか?」

立川談志「離れてない。…説明するのは好きじゃないんだけどね、才能の無駄遣いだからいやなんだけどね」

伊集院「すみません、すみません(笑)」

立川談志「生まれてきた、幼い頃っていうのは、鳥も熊も蟻も一緒みたいに画を描きますわねぇ」

伊集院「そうですね」

立川談志「それでは困るからって、分けさせますわな、ずっとそれで20歳まで描かれたんじゃ困るから」

伊集院「はい、はい」

立川談志「それを正常と言ってますわな。それが壊れてきたとき、正常じゃなくなってきたときに惚ける、と言ってますわな」

伊集院「はい」

立川談志「本来ならばそれが正常であって、無理してる。常識とか学習っていうのが無理だっていうのがありますから」

伊集院「無理して作ったルールであって、最初に見えてたのがホントとするならば」

立川談志「ホントなんだよ。学習しなかったら、そうなるんでしょ?放っておいたら、そうなるんじゃないですか?日常生活が困るでしょ。どうにもなんない」

伊集院「はい」

立川談志「正常であるっていうのは、無理してることになるでしょ。もっと言うと、物理も三次元も四次元もなにもあるもんか分からないけど、生まれたまんま、みたいな姿がホントであって、それが残ってるから夢でバランスをとってる意見もある」

伊集院「はい」

立川談志「マジックとか、不条理なものを見て、それに入りたいと思う。それを言葉のイリュージョンでやってるんです」

伊集院「…」

立川談志「落語では、そこまではいかないですけどね。『おめぇなんぞ、灸据えて天井破って飛んで行っちゃうぞ』なんてのも、イリュージョンだろうしね」

伊集院「談志師匠の『クソを喰らって西へ飛べ』っていう、イリュージョンに僕はえらくハマりましたけどね(笑)」

立川談志「ああ。講談の台詞ですけどね」

伊集院「落語っていうのは、原型を留めているシュールであって、『談志・円鏡 歌謡合戦』は、脳の反応みたいなもんで、直接脳に信号を送っているみたいなもんで」

立川談志「あれは、面白い時と面白くないときがあるんだよな」

伊集院「不思議ですよね。あんだけすっ飛んだものだったら、どこを切っても繋がりそうなものだけど、ディレクターの方に伺いましたけど、スッゴイ悩むと。全部が全部、シュールの塊だから、どこを切っても同じようなものだと思うけど、どこを切っても面白くなくなるって思っちゃったりすると」

立川談志「うん」

伊集院「あの図式が分かったら、もの凄い落語の喋りができるとおもうんですよ」

立川談志「うん」

伊集院「僕は、落語を離れてしまいましたけど、ラジオの中で目指したいのは、あそこなんですよ。まさにイリュージョンというか」

立川談志「種明かしするとね…なんで、イメージが浮かんでくるのか、そのイメージを追っていって確認するより先に、どんどんどんどん画が浮かんでくる。画に、自分の説明が追いつかなくなっていく」

伊集院「は…」

立川談志「それに近いのかもしれないな」

伊集院「スッゴイ疲れて、絶好調な時、分かるような気がします」

立川談志「疲れたときにきたりするんですよね。追っかけていけない。でも、ある程度追っかけないと、物事はまとまりませんな」

伊集院「はい、はい」

立川談志「そうなると、どっかで切らなければならない。たとえば、酔ったときにクドクド喋るだろ。あれがホントの姿なんだから」

伊集院「はい、はい」

立川談志「もっと滅茶苦茶な話を次から次へしたいんだけど、そうなるとまとまらないから、切る。それ、切ることに無理があるんじゃないかね。あっちが、ホントなんじゃないかね。切らないでいってるときも、どっかで学習に侵されてる部分がある」

伊集院「本来ならば、興味あったもの興味あったものに行って、前の物は放っておくべきなんだけど」

立川談志「そうそう」

伊集院「僕は、最初覚えて分析すれば分かるもんだと思ってたんですよ。『良い女ってのは、いるね。うなじの所にキリギリスがとまって、ずっと鳴いてるのにこの女は気付かないんだ。それでキリギリスは鳴いていて、なんて鳴いてんのかっていったら、キュウリくれ、キュウリくれって言ってて…』なんて話にいくのが、これは理屈なんだと思ってたんです。方程式があって、そうじゃなきゃこのスピードは出ないと思ってたら、方程式じゃなくて、キリギリスに興味が出て来たら、女は放って置こうってことなんですよね」

立川談志「言葉をね…言葉っていうのは、一つの物を具象化してるわけですから、たとえば抽象的な言葉、結果でも、現在でも、やれ色んな言葉、それらを具体化して、何故かって一切言わない。『アイツはオシャベリだね。この間、息も吐かずに2時間半喋った。缶詰食ったろ、缶詰食いながら喋ってるから、あれを見て驚いたのは、大洋漁業のやつ。そうそう。野球潰しちゃって、今やベイスターズ…』どっかで、切っちゃいたいんだろうな」

伊集院「もう、おしゃべりなヤツっていうのは、興味なくなってるんでしょうね」

立川談志「オシャベリなんぞ、辻褄合わせてるのは、しょうがないからやってるんであって、本来はセコイんだよ。止めちゃったら良い。止めちゃったら分かんなくなっちゃうからやってるんであって、止めたら良い」

伊集院「僕はあれ、若いからできるんだと思ってました。脳の回転が速い、若い時期だけだと」

立川談志「でもね、それが論理的に分かってくると、作れるよ。反応ばかりではなくて、作って置いておくことができるよね」

伊集院「パーツパーツみたいのを置いておいて、引っかかりそうなところに、それを出しながら、次の所に」

立川談志「作るところは可能ですよね。作ったところでテクニックで、自然な言葉と違うから、無理が出てくることもあるかもしれないけどね」

伊集院「何かを追っかけてる途中で、横から入ってきて逸れたって言うんだけど、それは逸れたんじゃなくて、脇道追っかけていけばいいじゃんっていう」

立川談志「そうそう」

伊集院「変なもん浮かんじゃったってことじゃなくて、それが浮かんじゃったら、浮かびっぱなしで、離れっぱなしで行っちゃえば良いじゃんってことですよね」

立川談志「それです」

伊集院「それが分かったところで、すぐに出来るものじゃないですけど」

立川談志「お前はできるだろ」

伊集院「努力の方向で、いっぱいセットを入れるのは分かるんです。でも、今のような、追っかけ方をすれば良いんだっていう」

立川談志「努力じゃどうにもならねぇだろ?でも、この場合、いくらか分析する努力はあるかもしれねぇな。でも、スピードが早くなると、感性だけになっていくね」

伊集院「今まで、絶好調で、疲労困憊の時に必ずきてたんですよ」

立川談志「うん」

伊集院「だから、分析はできず、トランス状態みたいな時にはできるんですけど」

立川談志「それが良いことかどうかは分からねぇけどね」

伊集院「大丈夫です(笑)この番組は、そういうことを分かって聞いてくれる人もいるんで」と語っていた。

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